仙台高等裁判所 昭和55年(ネ)99号 判決
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【判旨】
1 本件手形取引契約を締結するに当り、今田智則は同人の妻の父である被控訴人を連帯保証人とするというので、控訴会社の代表者縄野幸男と同社の従業員である訴外土田章とは、その保証意思を確認すべく、昭和五二年二月二二日頃今田の案内で被控訴人を訪ね、被控訴人方の居間で約一時間にわたり会談し、本件手形取引や連帯保証の趣旨・内容を説明した。
2 被控訴人は明治三六年一月二日生の男子で、昭和四九年(七一歳)頃から高血圧と動脈硬化により自宅近くの外科医師亀卦川滋の治療を受けていたが、昭和五〇年一一月一六日脳塞栓を起こして昭和五一年一月二〇日山形市立済生館病院に入院し、同年一一月初旬頃退院し、前記医師の治療を受けながら自宅療養を続けていた。入院当初は話すことも聞くこともできない状態であつたが、縄野幸男らが訪れた右の当時は或程度日常会話はできるまでになつていた。
3 被控訴人は縄野幸男からの前記説明を聞いたのちに金融取引約定書の連帯保証人欄に署名して捺印した。その場には被控訴人の妻丸子よんも茶菓の接待をするなどして同席していた。
以上のとおり認められる。<証拠判断略>
また<証拠>によれば、被控訴人は左半身麻痺で昭和五二年頃は言語障害、記銘力の減退が著しく、新聞等も読めない状態であり、特に同年一月一〇日に高熱を出した時の二日間ほどは高度の言語障害に陥つたが、恒常的にそうであつたわけではなく、悪化したり軽快したりの状態を繰返していたことが認められる。
以上の事実によれば、被控訴人は昭和五二年二月二二日当時、社会生活における利害の判断能力が相当に低下していたものというべきであるが、全く事理を弁識できない心神喪失の状態にあつたとまでは認め難い、その他、当時被控訴人が意思能力を有しなかつたと認めるべき十分な証拠はないから、控訴人主張の連帯保証契約は有効に成立したものであり、これを無効とすべき理由はない。
(田中恒朗 佐藤貞二 小林啓二)